連 載 記 事 |
0号 |
なし |
1号 |
第1回 本企画の趣旨 |
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この連載企画では、王子軍に敵対する勢力内の重要人物に焦点を当て、記者が知り得た事実を公開して行きたい。
読者諸賢の中には彼等に家族や友人を奪われたり傷つけられたりした人も少なくないであろうし、そうであれば「あんな奴等のことなど知りたくもない」と考える向きもあろうかと思う。
しかし、敵を知ることは勝利を得る上で重要である。
怒りを忘れない事と、知るべき事実から目をそむける事は別なのだ。
記者は本連載が王子軍の勝利に貢献できると確信している。
次号、第2回では、レルカー攻防戦において市街に火を放つという驚くべき暴挙に出た女王騎士ザハークを取り上げたい。 |
2号 |
第2回 ザハーク |
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前回の予告どおり、女王騎士ザハークについて知り得た情報を公開する。
出身はゴドウィン家の遠縁に当たる貴族。剣術の才をゴドウィン卿に見出され、彼の強い推薦を受けて女王騎士に任命された。
8年前のアーメス侵攻が初の実践であったにもかかわらず、他の女王騎士に全く劣らぬ戦果を残している。
沈着冷静というよりも冷酷非情。「目的のためには手段を選ばない」とは、彼のためにある言葉だと評する声が多い。
女王騎士でありながら女王家を裏切りゴドウィン派についたのは、ファレナを強大な国家にするにはゴドウィン卿のやり方が最善と確信しているためだという。
レルカーに放火したのも、王子軍を動揺させ迅速に撤退するため最善と判断したからそうしたまでなのだろう。
同じ女王騎士の一員であったカイル氏は「あの時は驚いたけど、考えてみりゃあいつならやりかねないよなー。予想しなかったオレも甘かったかも」と語っている。 |
3号 |
第3回 ユーラム・バロウズ |
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今回は、ニセモノを使って王子殿下の悪評を広めようとしたユーラム・バロウズ。
正直、この企画で取り上げるほどの人物とは思えない。が、本人にその意図がなかったとはいえ、彼の策は王子軍とセーブルを分断しかねなかったのであるから、ここで検証しておくことにする。
言わずと知れたバロウズ卿の次男。
長男ヒラム氏は女王家の内紛の祭に暗殺されているため、彼が時期当主と目されている。
知恵なし、力なし、根性なしの三重苦に加えて人望もないが、異常に執念深く、王子殿下に逆恨みしている。
今後も殿下に対するイヤがらせを続けるかもしれず、ゴドウィンとは別の意味で厄介な相手である。
なお、妹であるルセリナ嬢によると、幼少時は非常に仲の良い兄妹であったが、彼女が成長し父の仕事を手伝うようになると、ユーラム氏は不自然に距離を置くようになったとのこと。
リムスレーア姫に執着を見せ始めたのも、ちょうどそのころだという。 |
4号 |
第4回 ドルフ |
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ビーバーロッジ襲撃部隊を率いていたと見られるこの青年については、情報があまりにも少ない。
かの悪名高き暗殺組織・幽世の門の一員であり、太陽宮襲撃にも参加していたことは確実と思われるが、出生や経歴などは全くの謎に包まれている。
ただ、彼は幽世の門においては「ミカフツ」という名で呼ばれていたらしい。
この名は、8年前に解体された当時の幽世の門総師・タケフツを重い起こさせるが、両者の関係については想像を巡らせるほかないようだ。 |
5号 |
第5回 サルム・バロウズ |
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レインウォールが陥落し、積年の宿敵であるゴドウィン家の軍門に降ることになったバロウズ卿。しかし、巷に同情の声はない。
考えてみれば、第2位継承権しかないファルズラーム姫を先代の女王陛下にとゴリ押しし女王家内紛を引き起こしたのもバロウズ卿。堰の建設を強行してロードレイク暴動の原因を作ったのもバロウズ卿である。
さらに黎明の紋章を隠匿した上、ファレナの半分を売ろうとさえしたのだから、もはや疫病神とも言えるだろう。
彼にしてみれば、侵略戦争をも肯定するゴドウィン派の台頭を抑え平和を維持しようとの意図もあっただろうが、やり方があまりにも悪辣に過ぎた。 |
6号 |
第6回 ギゼル・ゴドウィン |
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リムスレーア姫の戴冠式が行われれば、半ば自動的に女王騎士長に就任することになるギゼル。
父・ゴドウィン卿の存在感が大きいためあまり目立たないが、彼を知る人々はみな「本当に危険なのはヤツ」と声を揃える。
例えば、闘神祭に巡らされていた巧妙な陰謀は、全て彼の仕掛けたものであったのだ。
ゴドウィン卿はある意味合理主義者で無駄を好まないが、ギゼル氏はそうではない。
必要の有無にかかわらず周到な罠を張り、他者を己の手の内で躍らせて楽しんでいるフシがうかがえる。
それだけに、女王騎士長となった彼がどんな手を打って来るか、予測が難しい。 |
7号 |
補足記事 本紙の立場について |
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ゴドウィン側はリムスレーア姫の即位を宣言していますが、本紙は今回の「戴冠式」を全く正当性のない無効のものであるとする王子殿下の見解を全面的に支持しております。
従いまして、紙上では今後も引き続き王子様を「王子殿下」、リムスレーア様を「王女殿下」「姫様」と表記して行く方針です。
読者諸賢のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。
なお、紙面の都合により、連載企画は休載させていただきます。 |
8号 |
なし |
9号 |
第7回 アレニア |
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今回は、黄昏の紋章を宿してドラート攻略戦に現れた女王騎士アレニアを取り上げる。
彼女の剣術はやはり女王騎士であった父親に叩き込まれたものだという。
その父はアーメス侵攻で戦死しているが、彼女は「父が死んだのは弱かったからだ」と語り、父の跡を継いだとか、父の仇を討とうとしている等と言われることを嫌っている。
かねてよりゴドウィン派、というよりゴドウィン家に対する強い親近感を隠しておらず、女王家を裏切った理由もそこにあると思われる。
ザハークのように確固たる思想信条があってのことではないようだ。
外見とは裏腹に、感情で動くことの多い人物と言えるだろう。 |
10号 |
第8回 親征軍 |
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今回は人物ではなく、ゴドウィン側が新女王親征と称する軍の陣容について予想してみたい。
戦場はおそらくドラート北東の平原と思われるので、お互い陸兵のみでの戦いになる。
ゴドウィン側で最強の陸兵はディルバ将軍の部隊だが、これはレインウォール周辺から動いていない。
とすると、親征軍の主力はソルファレナ駐留の王都守備軍。
これをザハーク、アレニアらの女王騎士が率いる形ではないだろうか。
通常、親征軍の指揮は女王騎士長がとるものだが、現在の太陽宮が「通常」でないことは言うまでもなく、ギゼルが出て来るかどうかは微妙なところだろう。 |
11号 |
第9回 女王騎士 |
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ドラート北東会戦では、ファレナ女王家を守護する要であるはずの女王騎士が敵味方に別れて激突する事になった。
そこで今回は、女王騎士そのものに焦点を当ててみたい。
その歴史はファレナ建国当時にさかのぼるが、当初は王都守護騎士団と同義であり、数百名の規模を有していたと言われる。
しかし、ソルファレナ遷都の際に王都守護兵団が別に組織され、女王騎士は女王陛下とその近親者のみを守護する文字通りの「騎士」となったのである。
その数は大幅に削減され、多いときでも10名に満たないが、それゆえにこそ女王騎士に選ばれる事はファレナ最高の剣士と認められることに等しく、これ以上はない名誉だ。
その名誉を担う者たちの中にゴドウィン派の手先に成り下がった者がいることは、まことに嘆かわしい限りである。 |
12号 |
第10回 サイアリーズ |
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彼女を本企画で取り上げなければならないのは非常に残念であり、記者個人の心情としても痛恨の極みである。
しかし、ドラート北東会戦においてリムスレーア姫救出作戦を妨害したのはまぎれもなく彼女であり、もはや「敵」であると断定せざるを得ない。
彼女はなぜ敵に回ったのであるうか?
十年ほど前、ファルズラーム陛下はバロウズ家の後押しで玉座についたのだが、それにもかかわらずバロウズ家の権勢が強くなりすぎることを警戒した。
そして、元老間の勢力均衡を保つために次女サイアリーズとゴドウィン家のギゼルを婚約させたのである。
しかし、当時のふたりは政略で婚約させられたことをまるで苦にしておらず、喜んでさえいたらしい。
特にギゼルの側はサイアリーズに崇拝に近い感情を抱いていたという。
彼女がゴドウィン側に走った理由をここに求めるのは、ゲスの勘繰りのそしりをまぬがれないだろう。だが、他に説明がつかないことも確かなのである。 |
13号 |
第11回 怪生物 |
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王子殿下らはサウロニクス城からの帰途、深き薄明の森の遺跡を調査したとのことだが、その際、動く巨大生物に遭遇し、戦闘を余儀なくされたという。
セラス湖の水門の役割を果たしている遺跡にも、巨人の姿をした謎の怪物が出現したとの証言もある。
これらは我々の常識では理解できない存在であり、ある意味では恐るべき「敵」と言えるだろう。
彼らが出現する場所はシンダル文明の遺跡に限られているようだが、何か理由があるのだろうか? |
14号 |
第12回 キルデリク |
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今回は新たに女王騎士に任命されたというキルデリクを取り上げる。
しかし、彼もドルフと同様、わかっていることは驚くほど少ない。ギゼルの代理人を務める闘技奴隷として闘神祭に現れたことは誰もが知っているが、それ以前にどこで何をしていたかは全くの謎なのである。
確実なのは、幽世の門の一員であることくらいと言えるだろう。
ただ、幽世の門の暗殺者はあまり感情を表に出さないのが普通であり、残忍な言動を好む彼は異質である。
ドラート制圧後、かなり残虐な粛清を行っているとのウワサもある。
今後、様々な意味で王子軍の大きな敵となるだろう。 |
15号 |
第13回 幽世の門 |
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ドワーフたちを襲っていた幽世の門の暗殺者は王子殿下の活躍によって倒されたが、その際に彼等は「烈身の秘薬」と呼ばれる薬を使用したという。
これは、一時的に常人をはるかに超える筋肉を得られる代わり、効力が切れればまず確実に命を落とすという極めて非常な薬物である。
かつての幽世の門には、薬物の開発を専門に行う部門ががあったとされている。
闘神祭や太陽宮襲撃で使われた眠り薬「冥夢の秘薬」やこの「烈身の秘薬」も、その部門の作品に間違いないだろう。
一連の事件でこれほど薬物が使用されているということは、薬物部門も復活しているのであろうか? |
16号 |
第14回 ジダン・ギュイス |
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セーブル、ロードレイクを陥落させたアーメス南岳兵団。その先鋒を務めるジダン・ギュイスが、かつてバロウズ卿と共謀していたことを記憶している読者も少なくないだろう。
昨日はバロウズ、今日はゴドウィンと節操のないことだが、どうも彼はもともとそういう人物のようである。
アーメス出身者に取材しても、「南岳神将マハ・スパルナに取り入ることで出世して来た俗物」 「信念や誇りとは無縁な男」 との評価しか出て来ない。
しかし、だからこそ欲望に忠実に行動している際の戦闘力には侮れないものがある。 |
17号 |
補足記事 アーメス西海兵団、本国に撤退 |
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ゴドウィン軍とアーメス南岳兵団が王子城から敗走した直後、エストライズに上陸していたアーメス西海兵団も、一切の戦闘行動を行わないままアーメス本国に帰還した。
長期の占領にもかかわらず、エストライズに被害らしい被害はないという。
未だセーブルの占拠を続ける南岳兵団を見捨てた形だが、西海兵団を率いるヴァルヤ家はもともと対外穏健派として知られている。
今回は、強硬派の牙城である南岳兵団の独走を牽制する意味で形だけの派遣を行ったのではないかとの見方が有力。 |
18号 |
第15回 マハ・スパルナ |
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子飼いだったはずのジダンをいとも簡単に見捨てた南岳神将マハ・スパルナ。
しかし、そうまでして逃げ込んだアーメス本国は、彼女を温かく迎えてはくれなかったようだ。
アーメスは五つの大部族が連合した国家で、マハのスパルナ家は五大部族のひとつダルジャ家の名家である。
今回のファレナへの侵攻はこのダルジャ族がゴドウィンと結託することによって行われたのだが、当初から軽率ではないかと懸念する声は少なくなかったらしい。ジャラト王も決して乗り気ではなかったようだ。
それが失敗に終わったことで面目を失ったダルジャ族は、責任の全てをマハひとりに負わせようしているのだという。
彼女はゴドウィン派にいいように利用された上、自分の部族にも裏切られたことになるわけだが、それもこれも彼女自身の強欲さが招いた結果であり、自業自得である。
ファレナとしては、アーメス国内でダルジャ族の立場が弱くなり、対外穏健派のイシュヴァーク族やマドラ族が主導権を握ったことを歓迎すべきであろう。 |
〃 |
第15回 バフラム・ルーガー |
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水軍頭領バフラム・ルーガー将軍は、ドラートから味方部隊を脱出させるため捨て身の攻撃を敢行、旗艦クルサスパと共に没した。
彼がかつて水軍頭領を務めたラージャ提督の副官であったことはよく知られているが、当初、貴族出身の彼は漁師の娘だったラージャ提督の下で働くことに抵抗を感じていたようだという。
しかし、提督の実力を認めてからは忠実な副官として職務に徹し、アーメス侵攻の際にも全力を挙げて提督を補佐した。
ゴドウィン派に走ることさえなければ、ファレナに必要な人材と言えただろう。
「デキるんだが、頭の固いヤツだったよ。だいぶ揉んでやったんだがねぇ」
ラージャ提督は寂しげにそう語った。 |
19号 |
第16回 ディルバ・ノウム |
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ストームフィスト攻略戦にて王子殿下と戦い倒れた彼は、武人の中の武人として名高く、ウィルド卿らからはその死を惜しむ声も上がっている。
盟友バフラム将軍と同様、ゴドウィン側についてしまったことが彼の不幸であるが、その理由もまた彼らしいものだったと言える。
8年前のアーメス侵攻の際、敵の無法に憤るあまりディルパの部隊はルクレティア軍師の作戦から逸脱して先行。敵中で孤立してしまった。
その時、敵の包囲を破って彼等を救出したのがマルスカール率いるゴドウィン家の部隊だったのである。
以後、彼は受けた恩義を決して忘れず、マルスカールのために力を尽くした。
その結果として死を迎えたことは、彼にとって本望だったのだろうか。 |
20号 |
第17回 マルスカール・ゴドウィン |
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手勢のほとんど全て、そして唯一の肉親であるギゼルまでも失ったというのに、マルスカールは何をしようと言うのだろうか。
彼には幼少時から非常に仲の良い従兄弟がいて、成人後も親しいつきあいが続いていた。
この従兄弟が、シャスレワール姫の夫となったマルダースである。
また、彼と妻ロザリンドとは周囲の羨望を集めるほど仲むつまじい夫婦であった。
そのふたりを女王家内紛で失ったことが、彼の現在の行動に影響しているのかもしれないが、だからと言って許されるものではあるまい。 |
21号 |
第18回 太陽の紋章 |
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27の真の紋章の一つであり、我等がファレナ女王国の象徴でもある太陽の紋章。
しかし、それは我々に対し恐るべき牙をむいた。
そして今もなお、マルスカールの手中にある。
ツヴァイク氏らの調査によると、マルスカールが太陽宮に持ち込んだ石版には太陽の紋章の力を引き出す方法が記されていたという。
マルスカールが今もその方法を使えるとしたら、我々は太陽の紋章を「敵」として戦わなければならないのだろうか。その戦いに勝利はあるのだろうか。
多くの関係者は、王子殿下の黎明の紋章とリオン嬢の黄昏の紋章が鍵を握るのではないかと語っている。 |